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ベテランになりつつある皮膚科医がみた世界。世の皮膚病の患者さんの役に立てれば幸です。08年5月より多忙のためしばらく相談に対する回答をお休みします。


by SkinDr
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辞職

残念ながら、現職(百万都市で最大の拠点病院の主任部長)を辞することとしました。

自分でもこの決断がよいのかはわかりません。
多くの重症の患者を抱えて、忙しく働く毎日でした。
部下を教育して専門医を取らせ、若い研修医を指導しながら一緒に働くのは楽しいことであります。

地域の医院からの紹介も増えて、昨年は800人近い紹介でした。
紹介は、手術・入院が必要であるから、という本来的な意味のものから、診断が解らない、検査をして欲しい、難治性である、糖尿病、高血圧、精神病など合併症を持っている、果ては話が長いから?と思われる症例まで様々です。

本来、現在の医師に優劣の別はなく、私が地域の医師に何らか指導をする必要はないはずです。それでも、難しく手間がかかっても、「これは自分にしかできない」と社会的な役割とやりがいを(勝手に)感じて働いてきました。しかし、最近の「やりがい」をも感じられなくなる事例も多くなりました。

「ここに来れば治ると言われたのに。」
「解らないとはどういうことか。」
「その治療はもう受けた。違う治療を探してきた。」
「なぜこの病院で集学的治療から看取りまでできないのだ」
「3時間も待たせるとはどういうことだ。」
一所懸命みてあげようという気持ちを失わせる言葉達。

追い打ちをかけるように、「治って当然、失敗したら罰」という司法判断。
個人を攻撃するマスコミ。
責任逃れしようとする病院幹部。
診療に必要な検査を平気で削ってくる保険組合(それでは何のための健康保険か解らない)。

最近は「何故私が地域のリスク全てを負わなければならないのだろう」と思うことがしばしばになりました。他に比べて安い給料で頑張る自分にその理由を見つけられなくなりました。これはとても悲しいことでした。しかし、残念ながら私に踏みとどまるだけの精神的な支援は院内、院外ともありませんでした。

私の場合もよく言われる勤務医の減少と同じ理由なのでしょう。
Burned outと言ってもよいかもしれません。
信頼してもらっていた患者さん達には申し訳ないのですが、そのような方達だけを診療できるわけではなくなってしまったのです。
後には大学から派遣されるでしょう。(これが医者が地域から大事にされない理由でしょう)

しばらく臨床の最前線は休みます。
by skindr | 2007-01-20 03:04 | 皮膚科