ベテランになりつつある皮膚科医がみた世界。世の皮膚病の患者さんの役に立てれば幸です。08年5月より多忙のためしばらく相談に対する回答をお休みします。


by SkinDr
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カテゴリ:感染症( 6 )

つながるとうつる

<コンピューターウイルス>作成者、国内で初逮捕 京都府警
Excite エキサイト : 社会ニュース

私はマイナーなコンピュータを使っているのであまり被害に遭いませんが、先日友人から受け取ったUSBメモリを実験用のパソコンに挿すと、ウイルスチェッカーにはじかれました。今はwebよりもUSBメモリで感染することが多いとのこと。PCウイルスの生き様を考えるとまさに「性病」に酷似しています。

性病も予防する方法がしっかり確立しているわけですが、決して無くなることはありません。強力な伝染性と病原性をもっていた天然痘は根絶され、ポリオや海外では麻疹(はしか)も根絶されようとしているのに、です。

ちなみに、日本は先進国の中で唯一の「麻疹輸出国」として悪名高い国なのです。きちんとしたワクチン行政が行われていれば、今頃麻疹に医療費を使う必要はなかったはずなのですが、ごく稀に生じる副作用についてマスコミが書き立てたために、世論的にワクチン拒否が流行り、現在の惨状に至るわけです。しかも麻疹の後にはSSPEという治療法のない恐ろしい神経病が起きる可能性があります。科学的な知性って本当に大事です。PCもみんなが予防接種していれば広まらないはずでしょう。

性病はきっと根絶されないでしょう。コンピュータ同士、人間同士、つながらなければ感染しないけど、つながらないと孤独死してしまうという生命の原点に感染の機会を持ってきている病原体はなかなかに退治が難しいと思われます。今回の作者もきっと孤独で寂しかったのでしょう。

生物全体から見れば、個体発生後に遺伝子(プログラム)のやりとりを媒介するウイルスの存在は貴重なのかもしれませんが。

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by skindr | 2008-01-29 18:38 | 感染症

TORABASAMIさんへ、疥癬

TORABASAMIさんへ

山の神に対する苦労は私もよくわかります(苦笑)。

疥癬という診断が間違いないという前提でお話しします。

疥癬はヒゼンダニというダニが皮膚に寄生する病気です。
彼らは大きさが0.1mm位で肉眼では見えません。
で、皮膚の角質層に穴を掘ってそのトンネルの中で卵を産み増えていきます。
問題は寄生するときに非常に強い痒みを伴うことです。

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by skindr | 2007-10-16 00:14 | 感染症

マラリア

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医学部生の頃にならったマラリア、自分で診てもきっと診断できないだろう、、、。

温暖化と共に、西日本はマラリアを媒介する蚊の生息域となるという予測があります。
長崎大学熱帯医学研究所が実験したところ、この蚊は自力で車で2時間程度の距離まで飛んでいってしまうそうです。一度上陸すると感染拡大は防げないでしょう。

「動物が媒介する感染症は根絶できない」というのが現在のコンセンサスです。
この薬の作用の原理は全く解りませんが、安くてよい薬ができることを祈ります。
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by skindr | 2007-09-21 08:19 | 感染症
夜中に病院を受診する若者がいた。
頭が痒い、ふけが出るというのだ。
当直の私はもちろん、「そんな症状で時間外に受診するなんて不謹慎だ。どうせ仕事で来られないとかいうのだろうが、そんなのは誰でも一緒だぞ。」と怒りを露わに救急外来へと向かった。

いたのは20代後半の青年。よい体格をしていた。
で、その頭中に明らかにフケがついていた。

説教しようという気持ちはすぐに忘れ去られた。
「何かスポーツをしていますか?」
「格闘技を少し」
「失礼ですが、あなたはよわっちいですか?それともかなりの腕前なのですか?」
「うーん、自分で言うのも何ですが」
おもむろに、リュックサックから格闘系の雑誌を取り出すと、自分の写真が載った頁を見せてくれた。「いや、これは負けた試合なのですが、、、」

「あなたはどこで練習しているのですか?」
「市内の高校の柔道部、レスリング部などで指導しながら練習しています。」
聞けばいずれも強豪校である。

ここまでの話で既に診断は確定していた。

トリコフィトン トンズランスと言われる水虫菌の感染です。

この菌は昔から日本にもあったと言われているのですが、近年、ヨーロッパから入ってきて大流行しているのです。
もともと頭に感染することが多く、日本の一流選手達がヨーロッパでの交流試合で移されてきたのです。その後これらの選手が国内での試合で感染させたため、海外遠征するような強豪校、そこと練習試合するような強豪校の選手が患者になるわけです。

私が、彼によわっちいかどうかを確認したのはそういう理由からなのでした。というわけで、格闘家、その家族に格闘技をしている人がいたら、頭皮の病気には要注意です。
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by SkinDr | 2006-07-13 21:10 | 感染症

りんご病1

「頬が紅いことを母親が気にしていますので診て下さい。」
という皮膚科開業医の先生の紹介状を持って来た母娘がいました。

頬は真っ赤、いわゆる平手打ちされたときのような紅斑です。少し熱があり、くびのリンパ節も腫れています。

これは、これは、、、、、
何度も添書を見返しますが、何も書いてありません。

「、、、、りんご病ですね。」

母親も納得して帰りました。
念のためしたウイルス抗体検査(パルボウイルスB19というウイルスが原因です)も陽性でした。(りんご病とそのウイルスについてはまた書きます)

私は日本皮膚科学会認定専門医ですが、別にそうでなくてもこれは診断できて当たり前ではないでしょうか。初診料の上に、紹介状の費用まで払った患者さん、再度当院で初診料を払っています。紹介した開業医は自分のお金は一銭も使わずに、私に診断を教えてもらった形です。

日本には医者の格付けはありませんので、全て口コミで判断するしかないのがむずかしいところですが、、、、
皆様、医者はしっかり選びましょう。
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by SkinDr | 2006-07-08 18:01 | 感染症

人食いバクテリア

夏に刺身を食べて死ぬ、と言う病気をご存じですか。

これは肝臓が悪い人だけに感染する「ビブリオ バルニフィカス」という菌の感染症です。
この菌は海水温が20度以上になる夏に、海水よりも塩分濃度の低い河口付近(汽水域)にいる魚の中で増殖する菌です。

食べるとなんと胃から血中に菌が感染して全身に感染症(敗血症)を起こして、その後菌が足に着床して壊死性筋膜炎という病態を招きます。筋肉と皮膚の間に膿がたまって、広範囲に皮膚が壊死します。壊死は時間単位で広がり、適切な処置を施さなければ確実に死亡します。しばらく前にマスコミで話題になった人食いバクテリアという奴の一種ですね。

**********

帰宅の途に就く直前に内科からかかってきた電話、「下肢がなんだか硬いんですよねー、ちょっと見てもらえます?」と言う。「今から?」と思いつつ、聞けば既に高熱と血圧低下があるとのこと。肝硬変があり、糖尿もあるとのこと。電話だけで、うーん、嫌な予感。(この時点で肝臓、糖尿の専門医二人)

「ひとつだけ大急ぎで聞いて欲しいんだけど、もしかして入院前日には、、、」
ビンゴ、お刺身食べたのとのこと。今日は7月。

「、、、、、、、、、、、、、、、、、」

とりあえず緊急MRI撮るように主治医に説明、血小板は3万しかないとのこと。輸血と血小板の準備をしておくようにさらにお願いする。CPK1,500。現在殆ど無尿、これはCPKよりはショックによる腎前性の腎不全か。

診察に行くと(皮膚科医、3人目)、下肢には紫斑が出現しており、非常に強い炎症反応とは裏腹に皮膚は冷たい。間違いない。たまたま放射線科医(二人、5,6人目)が残っていたようだ。緊急で撮ったMRIでは壊死性筋膜炎の像、下腿の筋群の中まで膿瘍がある。これには整形外科も必要だ。

直ちに切開しなければ助からない。切開したとしてもどうか解らないが。急変を家族が納得できるだろうか。非常に厳しいと家族、本人に説明。

感染症専門医(7人目)を呼ぶ。まだ検査ができるというので細菌の技師を呼び出して昨日の血液培養の結果を見る。バナナ状のグラム陰性桿菌。感染症医は既に整形外科医に電話をかけている。やってきた整形外科医3人(8,9,10人目)MRIを見る。
その間に手術場に連絡、手術の準備。麻酔科医が呼び出し(11人目)

本人、家族の同意を得て手術室へ向かったのは午前0時であった。左下腿と右下肢全体を切開すると画像通り脂肪以下はドロドロの状態。デブリードマンと洗浄(生食はこの菌の好むところであるのでとりあえず蒸留水で)、何とか一命を取り留めたが予断を許さない状況である。

10人の医者と技師、看護師、手術部全体が動いて救命できたのは素晴らしいことでした。と言うわけで、病歴がとても大事なこの病気、診断が生死を分けます。皮膚科はいつでも腕を磨いておかなければなりません。

病院の皮膚科は水虫みるのとは全く違う側面があるんです。こんな仕事もしている私たち、待ち時間が長いと文句言わないでね。
(ああ、長かった)
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by SkinDr | 2006-07-07 21:16 | 感染症