ベテランになりつつある皮膚科医がみた世界。世の皮膚病の患者さんの役に立てれば幸です。08年5月より多忙のためしばらく相談に対する回答をお休みします。


by SkinDr
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外傷の後に出てくる血管性の良性腫瘍に化膿性肉芽腫(毛細血管拡張性肉芽腫)という病気があります。

今日の患者さんはそれが足に出来てやってきました。
別の診療所でも診察を受けたという彼女は特に紹介状も持たずにやってきました。

髪をアップにした品のいいおばさまからおばあさまへなろうかというご年齢でした。

手術(切除)を勧めましたが、それは決断できないとのことでいろいろお話しして冷凍凝固治療(cryosurgery)を行うこととしました。
その処置をして帰ったと思ったら凄い剣幕で戻ってきました。

「なぜこんなに治療費が高いの?」
「いや、これは保険の診療点数ですので、別に高い訳ではありません。」

良性腫瘍の冷凍凝固治療の自己負担はおよそ6000円くらいになります。それに初診料、紹介状のない患者の加算などが入って1万円を超える程度でした。

彼女は信じられないという顔で病院を去っていきました。

私は公的な大病院の皮膚科部長をしていますが、自分の体に出来た腫瘍の診断、予後、治療を受けることで1万円の負担が高いと感じる医療に私はショックを受けました。

もしかしたらそれは悪性の腫瘍でこれから拡大切除と抗癌剤治療が要る、というものである可能性もある訳です。それについて専門家の意見を聞いて、治療を受けて、1万円です。

きっとその髪を整えるにはそれなりのお金を払っているでしょう。その持ち物にはもっとお金もかけているでしょう。

長い間診療に従事し、多くの学会に参加して研鑽ししてもっともいいと思う医療を提供しても、適当な診断をして効きもしない治療をしても、残念ながら保険診療では同じです。いえ、効かないで数回通う方が診療報酬は上がるかもしれません。そうであれば、個人の倫理観以外に診療のレベルを保つ方法はなく、公定価格の中でできるだけ短い時間でできるだけ安い(利ざやの出る)診療をしようと考えるのが一般的でしょう。

日本の医療レベルを上げられないのは、実は世相とはかけ離れた値段に設定された保険診療によるものだと感じさせられました。

自分の診療のレベルは落とせませんが、なんだかモチベーションは下がります。
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by SkinDr | 2006-06-28 22:16 | 皮膚科