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ベテランになりつつある皮膚科医がみた世界。世の皮膚病の患者さんの役に立てれば幸です。08年5月より多忙のためしばらく相談に対する回答をお休みします。


by SkinDr
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セカンドオピニオン

ある病院から癌の患者さんが紹介されてきた。紹介元は公的な病院の整形外科である。

左足に出来ていたいぼをとったら皮膚癌であった。その後しばらくして、足の付け根が腫れてきた。足の付け根にできた塊はやはり転移であった。それに対して放射線をかけたが再発してきたので切断するという。高齢の母親のその病状に対して、他に方法がないのかと家族が意見を探していた。

CTおよび入院カルテまで全て持参で受診してきた。

既に初手で大きく方針が間違っていると思われたこの患者さんに対して、どのようなセカンドオピニオンが言えるだろうか。過去の治療方針への疑問を投げかけても現在の患者の状況は改善されない。後悔の念を抱かせるようでは、医師として何をしているのか解らなくなる。
今すべき事は大腿の血管沿いにあるリンパ節の転移を詳しく調べて、必要なレベルまで廓清することである。遠隔転移が出ればやむを得ないが。

では、これから行われることは「切断」である。この年齢で大腿での切断はほぼ間違いなく二度と歩くことはできないだろう。では、切断したら、命が助かるのか。それも全く関係ないだろう。将来的にリンパ節が詰まって下肢全体が浮腫状に腫れることを抑制はできるものの、腫瘍の治療という点では全くの的はずれと言わざるを得ない。残念ながらこれが保健医療の実力なのかもしれない。保健医療には「切断」に点数はあっても「調べ、学び、考えること、知識、知恵、経験」に対する対価は無いからだ。

治療途中からのセカンドオピニオンの難しさを感じると同時に、悪性腫瘍の時はやはり最初に意見を聞くことの大事さを痛感した。

やっぱり、、、医者は選びましょう。選べるうちに。

(しかし、うちの病院、セカンドオピニオンの料金を設定していないため、これも普通の保険受診でした。山ほどの資料と切羽詰まった家族を迎えて1時間、これで初診料2700円のみでは皮膚科がつぶれます。院長、早くどうにかして下さい。)
by SkinDr | 2006-07-10 22:15 | 皮膚科